カミングアウト

告白すると、わたしはこれまでに外国にいったことがない。
こどものころから乗り物酔いがひどく、20代になっても、新幹線はこだましか乗りたくなかった。
ひかりやのぞみは、酔っても途中で降りられないのが怖かった。
(実際にはしかたなく乗って、酔うこともなかったのだが)
「アネロンニスキャップ」という酔い止めの薬を旅行には必ず携帯したものだ。
それで、当然のように、飛行機は怖い。
あんな鉄の固まりが空を飛ぶなんて信じられない、から怖いのではなくて、7時間とか11時間とかのあいだ、どんなに酔っても降りられないことが怖い。
とはいえ大学生のときに福岡まで、30歳になってから札幌までと神戸まで、それから仕事で青森まで、飛行機で飛んだことがある。
それぞれ1時間ちょっとだったし、アネロンニスキャップも必ず服用していたので、ことなきを得た。
しかし国外となるとそうはいかない。
どう考えても、機内で数時間以上無事でいられる気がしないのだ。
どこかでその恐怖を上回るモチベーションを持てていたら、と思うが、仕事上でモチベーションが持てそうになったころにはこどもも生まれて、一人で海外という「目」はなくなった。
(家族旅行で海外という発想はなかった。笑)
こどもたちも大きくなったいま、いこうと思えばいつでもいける、という状態になっているわけだが、もう一押し欲しいところだ。
青森にいったときは小さなプロペラ機だったのが、仕事と思えば飛行機自体は怖くなかった。
時間も短かったし。
海外も仕事ということになればきっと「えいや!」といけるだろう。
「いまさら初めての海外旅行」なんて書き下ろし新書はどうかなあ。