森ガール

不覚にも知らなかった、この言葉。
ちかごろ流行る女の子のファッションとライフスタイルの一種で「森にいる女の子みたいな(女の子)」という意味らしい。
ふわふわしたスカートやワンピースを好み、小物も手作りニット帽やファーの襟巻きなど、アクセサリーは動物のモチーフ、足元はローヒールのブーツ、ヘアスタイルもふわっと系でメイクはナチュラル。
そしてお散歩好きで、カメラをつねに持ち歩き、気に入った風景を撮影するのだそうた。
ケーキも手作りで、紅茶はポットで葉っぱからいれる。
蒼井優などがたやすくイメージできる「森ガール」だろうが、わたしは純正の人をリアルに一人知っている。
いきつけの文房具屋さんに勤めている女性で、これまたいきつけのカフェでよくいっしょになるので、最近話すようになった。
ふわふわしたスカートをいつもはいているし、上着もふんわりしているし、なにより、頬杖が両手だ。
お遊戯でお花を表す両手の形にして肘をテーブルに置き、その上にお顔をのせ、ちょっとかしげる
あしながおじさんってどんな人なのかしら、と想像しているジュディその人みたいで、いつ見かけても、わたしもいっしょにほんわかあな気持ちになる。
彼女は「森ガール」出現以前から「森ガール」だったはずで、そういう人は純正と呼びたいものだ。
『とくダネ!』によるレポートを見ていると、言葉ができてから参入してくる人たちというのは、つまり「女子戦線離脱」組なのでは、と思えてきた。
じっさい「ちょっと前までは、メイクもがんばっていました」という森ガールもいたし「休みの日には思い切り好きな格好をして公園をお散歩して写真を撮るのがいいんです」という森ガールは事実人目というものを意識していなかった。
森ガールの集うカフェにはカップルも多数いて、男の子たちは「森ガールはかわいい」といっている、とリポーターはいうが、インタビュー映像はなかったし、なんといっても、レポート全体から「男」の気配はなかった。
森ガールのファッションには、男性に向けた「かわいいでしょ」の記号がいっさいないといっていい。
それはたしかに楽なのだろう。
片や草食系男子で、片や森ガールなら、少子化はこれからも止まらないだろうなあ、なんて。
ところで、森ガール御用達のカフェのドアの高さは147センチだという。
小柄な女性でもかがまないと入れない。
店員さんによれば「こどものころの気持ちを思い出していただくため」ということで、階段の幅も狭いし、テーブルや椅子も小さいようだが、これは全く逆だろう。
こどものころは、ドアのノブが高いところにあって、階段の一段一段は高いし、テーブルも椅子も大きくて、足がぶらんぶらんする。
いまの身長でこどものころの気持ちを思い出すためには、なにもかもが規格より大きくなければならないのだ。
身長195センチの川合俊一さんは、高校当時から、電車のドアをくぐって出てきたという。
周りの生徒たちはその格好よさに憧れたらしい。
ドアをくぐって出入りするのは、普通の大人より「でかい」人、だ。
幼稚園の保護者会では小さい椅子に座ってすごく疲れるが、それはわたしたちがおかあさんという大人になったから。
幼稚園のころはこんなに小さかったのねえ、とは思うが、幼稚園児の気持ちに戻れるわけではない。
そこんとこ、よろしく。