I met him.

この前の日曜日、高校で英語を教えてくださった先生が亡くなった。
96歳。
かねてより、姪御さんとそのご家族のもとで厚い介護を受けていらしたが、「ねむり姫のような」数日のあとで、静かに旅立たれたそうだ。

きのう、教会で行われた葬送式に、わたしも参加した。
先生のお好きだった讃美歌をみなで歌い、聖書を読み、牧師さんのお話を聴く。

教会にもいらっしゃれなくなったころ、牧師さんがおうちを訪ねると、先生は起きておられたが、お話はできなかったという。
そのときちょうどテレビでクイズ番組が始まり、飛行家のリンドバークの映像が流れた。
先生は一瞬顔を輝かせ、英語で"I met him."とおっしゃった。

クイズの問題は、三人の外国人を挙げ、このなかで日本にきたことのある人は誰でしょう、というものだったので、先生が「会った」とおっしゃるならリンドバーグに違いない、と一同テレビを見守ると、はたしてそれは正解だった。

牧師さんは後でリンドバーグについて調べてみた。
1931年に来日して、霞ヶ浦の飛行場にきていたことがわかった。
きっとそのときお会いになったのでしょう、とエピソードは結ばれた。

当時先生は18歳で、津田塾大学に入られたころだったろうか。
"I met him."
そんなふうに思い出せる出会いがあった人生。
神様にもイエス様にも、先にゆかれたご家族やおともだちにも、話すことをいっぱい携えてゆかれたことだろう。

牧師さんがおっしゃっていたように、わたしたちもまた、先生と再会したときに、あのあとにはね、こんなことがあったんですよ、とたくさんのお話を持っていけるように、この世で与えられた時間と役目を、もうひとつも二つもふんばって、全うしよう。